
52歳になったお笑い芸人・カンニング竹山の活動領域は多岐にわたる。あらゆる現場で、誰とのカラミも難なくこなすタレント、舌鋒鋭いコメンテーター、YouTubeでの情報発信、毎年完売必至の単独ライブーー。お笑い番組『エンタの神様』(日テレ)で「キレ芸」を開花させブレイクを掴んだ男は、マルチな才能を発揮している。
だが、そんな竹山も40代後半に差し掛かった時に「このままでいいのか」と、漠然とした不安を感じたという。そんな時、ある大御所のアドバイスをきっかけに、竹山は人生後半戦を「趣味」と向き合って過ごすようになる。「現代ビジネス」単独インタビューをお届けしよう。
【写真】カンニング竹山が、カメラマンに詰め寄って…!?
「ちゃんと遊んでるのか」
写真/濱崎慎治
――『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』(ポプラ新書)が’23年7月に発売されました。キャンプやツーリング、アメリカンフットボールなど、さまざまな趣味を楽しむための竹山流ノウハウが綴られた一冊です。「遊ぶ」ようになったきっかけはありましたか。
カンニング竹山(以下、竹山):40代後半、もがいているというか悩んでいるというか、とにかくそういう時期があったんです。仕事は順調なんだけれど、このままでいいのか、というような。
ある時、番組で共演した堺正章さんが「ちゃんと遊んでるのか」と声をかけてくれたんです。あの大御所である堺先生にも40代後半、悩んでいた時期があったそうなんです。
「そういう時は、どうすればいいんですか」と伺うと、堺先生は「遊ぶんだよ」と言うんです。芸能界随一の趣味人である大先輩にストレートな言葉をもらい、心のモヤモヤが晴れたような気がしました。
それから、実際に「遊び」を意識するようになって、人生がちょっとずつ良い方向に回り出した気がするんですよね。50歳を過ぎた今もそうです。
趣味が義務になったらダメ
写真/濱崎慎治
――「ひとりで」趣味を楽しむのは、どんな醍醐味があるのでしょうか。
竹山:年齢を重ねてくると、単純に一緒に行く仲間がいなくなっていくんですよね。昔だったら後輩を引き連れてどこかに、とかあったけど、その後輩に子供ができたりで時間を作るのが難しい。
かと言って奥さんを自分の趣味に付き合わせるのも何か違う。だったらひとりでいいやと。ひとりだと、その場で同じ趣味を持った新しい仲間ができるのが楽しいです。
昔から集団行動がそんなに得意じゃなかったんですよ、めんどくせえと言うか。気使っちゃうっていうのもありますし。合わなかった趣味もありますよ、草野球とか。
僕野球好きだからトライしたんですけど、朝早くグラウンドに行かなきゃとか、メンバー集めなきゃとか、面倒臭くなっちゃって。草野球好きな芸人も多いんですけど、趣味が義務になっちゃうとダメ。楽しいことするのに、人に合わせなきゃいけないとなると……結局ひとりでいいかな、ってなるんですよね。
――書籍のタイトルにもある「50歳」、竹山さんにとってどういう年齢でしたか?
竹山:もっと落ち着いてて、もっと大物(タレント)になってるんだろうな、って思っていましたね。実際は、全然違いましたけど。
でも一方で、40代の頃と比べると、周りの目は変わってきたんです。周囲は僕を「大人」として接してくるから、こちらも中途半端に接していたらダメだな、ちゃんとしないとなと。言わなきゃいけないことはきちんと言って、しっかりした考えを持たないと、と思うようになりました。
若い頃には経済的にできなくて諦めていたこともあります。でも50歳過ぎてから、やるならやらないと、人生終わっちゃうなって。例えばキャンプはそうですよね。ある程度収入が増えてきて、若い頃には手が届かなかったキャンピングカーとか買えるようになったりして。そういう年頃です。
木梨憲武さんが教えてくれたこと
ーーお金、時間、体力、仲間……。50代を楽しむ上では、一番大切なのは?
竹山:「自分が遊んでるぞ」って思えるような身体づくりが、人生を楽しむバロメーターになると思うんですよね。「しんどいな」って思って暮らしてると、あっという間におじいちゃんになっちゃうから、趣味を通じて「俺まだバイク乗れるな、まだいけるな」って確認しているような感じですね。
――著書からは、「趣味にこだわりすぎる必要はない」というメッセージを受け取りました。
竹山:よく「ニワカだ」「ブームに乗ってる」とか言われますけど、やるだけやってダメならやめちゃえばいいんですよ。それは遊びだから。それを数多くやった人のほうが経験値のある、面白い大人になれるんだと思います。
――堺さんとのエピソードが挙がりましたが、遊びの師匠は他にいらっしゃいますか?
竹山:(とんねるずの木梨)憲武さんやヒロミさんたち、芸能界の10個くらい先輩たちですね。僕って不思議と節目節目に、人生を導いてくださる方が現れるんです。
憲武さんは「仕事は遊び、遊びは仕事」と教えてくれました。テレビに出ている人で、人生充実してる人なんか誰もいないですよ。テレビに出るということは、自分の身を削って、自分の名前を売って人前に出ている一方で、ある時突然ゼロになるリスクもある。その不安と共にみんな生きているから、辞めちゃうタレントも出てくるわけです。
そういうことを踏まえて、いい意味で「全部思い詰めて真面目にやらない、全部遊びだから」ってスタンスで仕事に取り組んでいます。若い頃は「成果を上げよう」「爪痕を残してやろう」って思いもありましたけど、今はとりあえず現場に行ってみて、やりたいことを全部出してみようって感覚で。仕事の捉え方と、趣味の捉え方の距離を近づけていくって言うのかな。
あと、無理にやる気をスイッチングしようとはしないです。「仕事はオン、休みはオフ」みたいに分けてしまうと、それができなかった時に心がすり減ってしまいますから。
僕はもう12年くらい前からYouTubeやっているんですけど、最近YouTube始めると、「バズんなきゃ」っていう感覚に囚われている人が多い。でもそれになりすぎると、だんだんつまんなくなって行っちゃうんですよ。
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